『4444』刊行記念 古川日出男ロングインタビュー 読むたびにかたちを変える小説

22 四四

   
 起立、礼、着席。それじゃあ定理。
 おお、いま顔が輝いたな?
 そうだ、今日は定理だ。テイリ、と復唱。それは理論じゃない。証明できるからな。リロンじゃない、ショウメイできます、と復唱。いいか? 算数の教科書をひらいたって、むだだぞ。いま、おれは大人の安東として話してるんだからな。担任のアンドウ先生じゃない、ただ一人の人間としての、そうだ——人生の先輩の。
 さあ、四年四組だ。
 このクラスだけの定理を、じゃあ、やるぞ。
 おまえたちにはおまえたちの人数がある。
 児童数だ。
 しかし、四年四組の定理においては、おまえたちが何人いても、その合計は一に等しい。
 つまり、おまえたちが十二人だけでも、答えは一クラス。
 おまえたちが二十二人なら?
 答えは一クラス。
「四年四組に属している児童1に、何人の児童を足しても、答えは——」と導きだされるのが……。
 ん?
 むずかしいか。
 じゃあ、たとえば。
 たとえば、だ。
 三田、大峰、それと久保田、おまえたちを足したら、何クラスだ?
 そう、1。
 そこに原田を足したら?
 そう、1。
 そこにファンタ……じゃない、望月も足したら?
 ほら、1。
 だから「答えは——つねに=1」だ。
 おれは先週、職員会議で大胆な提案をした。
 おれは先週、実験的な提案をした。
 転校生が来たら、全部、全部ってゆうのは全員だな、このクラスに受け入れる。
 受け入れますと言ったんだ。
 これは実験だ。もちろんルールが変わるからな。一クラスの児童数のめどってのは、最大どのあたりかの理想数をおれは無視する。理想の数を。しかし、ほかの先生たちはうれしいだろう。負担が減るからな。そう、負担だ。一人の担任にかかえこめる数。フタン、と復唱。
 よし。
 いいか?
 転校生はふえる。
 この四年四組の、いわば人口がふえる。
 それでもこのクラスは一クラスでしかない。
 おまえたち一人ひとりが、つまり、=1だ。これが四年四組の定理、あるいはアンドウの四四定理だ。おまえたちは無限に、1だ。

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