『4444』刊行記念 古川日出男ロングインタビュー 読むたびにかたちを変える小説

14 いつまでファッキン二十一世紀?

   
 ……録音します。
「恋愛を成功させる方法は一つしかありません。わたしはそれを知っています。絶対確実。百発百中。つまり恋愛ミッションの本命。わたしはこの街に住んでいますが、わたしはこの街を、十二区からなる『区制』にしました。変えることにしました。もう、なんとか町何丁目なんて、いいの! なんとか町、北、何番地とか、南、何号とか、なしなの! この十二区は、ずばり、十二星座区です。ようするに……いいですか、山羊区、水瓶区、魚区、牡羊区、牡牛区、双子区、蟹区、獅子区、乙女区、天秤区、蠍区、射手区。そしてあらゆる本日の星占いの、それは雑誌でもテレビでもインターネットでもいいから、星占いの、恋愛運のところを見ます。いちばん恋愛運のパワフルな星座が、本日、わたしが赴かなければならない地域です。たとえば……愛でいっぱいの天秤区! あたらしい出会いがあるかもの蟹区! むかしの関係が復活しますの乙女区! ああ、なんて素晴らしい『区制』だろう。なんて……なんて、歩いているだけで幸福が降るような街なんだろう。わたしは、だから決めたんです。区分というのは自分で作ろうって。土地に関してだけじゃありません。時間も。そう、時間もです。いつまでファッキン二十一世紀? わたしたちはあの頃、二十一世紀じゃない時代の子供たちで、街は……街だって自由自在に変形して。それをとり戻します。とり戻すの。だから手はじめに、恋愛。百発百中で絶対確実なプランニングの。ねえ、三田君?」
 交替録音、終了。

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