『4444』刊行記念 古川日出男ロングインタビュー 読むたびにかたちを変える小説

36 なぜ僕がヘルプミーって叫んだらいけないんだろう?

   
 妻に冷蔵庫という名前をつける。冷蔵庫は病気になってしまう。その治療にはさまざまな費用がかかるが、払えない。かつて家族と縁を切ったことを僕は後悔するが、借りられない。どこの正規雇用の社員でもないことを、保険を三年前に解約したことを悔やむが、遅い。しかし家にはキッチンがあり、そこには「刃物のようなもの」があり、必然的に僕は犯罪を選択する。拳銃を持たないで犯罪が行なえる日本に生まれたことに感謝しながら、押し入り、裏の倉庫に店員を案内させて、そこに業務用の冷蔵庫を発見して、もう揉みあえない、と知る。
 だが冷蔵庫は生きなければならないのだ。

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