『4444』刊行記念 古川日出男ロングインタビュー 読むたびにかたちを変える小説

24 いくらですかと運賃をきいてみます?

   
 そこはバス停の墓場なのです。いっぱいのバス停があるのです。どこどこ行き、の表示もみんな違うのです。じゃあ、そこにはバスは来ないのでしょうか? わたしはバスを待ってみました。じつは、わたしは出口を探していたのです。その村は、夏のつぎに秋、秋のつぎに冬になったまま、ぜんぜん季節が変わりませんでした。冬が終わらないのです。雪がいっぱい積もりすぎて、村からも出られないのです。どうしたら冬のお外に出られるでしょうか? そのために、わたしはバス停の墓場に行きました。そんなにもたくさんのバス停があるならば、きっと、いつかはバスが来るはずだから。わたしは昼間、そこに行って、夕方も待って、まだバスが一台も来ないから、夜まで待ちました。冬の村でしたから、寒かったです。でも、待ったかいはありました。真夜中にとうとう、バスは来たのです。金網のついたバスでした。そして、白い人たちが運転しているバスでした。わたしは、ママはね、乗りました。驚いたことに、白い人たちと思ったのは、うさぎの運転手さんと鶏の車掌さんでした。車掌さんというのは、ワンマン・バスにはいない、チケットを切る人なのね。ママは運転手さんに見憶えがあったから、あれ? あなたはチーじゃない? とききました。あのね、チーというのはね、ママが小学生のときに飼育係をしていて、校庭で世話をしていた白うさぎなの。ええ、迎えにきましたとチーは言いました。さあ、冬のお外に出発しましょう、とチーは言いました。車掌さんの鶏がコケッコーと鳴きました。ね、こんなお話なら、どう? ほらね、この携帯のメールの写真、ふしぎなバス停のお墓のね、これはきのうママの古ぅいお友だちが撮影して送ってくれたって言ったでしょう? ね、このお話で意味はわかったかな? そう、もっと続けようか、いっぱい? じゃあね、コケッコーの車掌さんに、いくらですかと運賃をきいてみます?

続きを読む