2009.09.17
第21回配本。
旧ユーゴスラヴィア出身のユダヤ系作家、ダニロ・キシュ。「庭、灰」は、著者の自伝的三部作のうちの一作で、待望の本邦初訳です。もう一つの収録作「見えない都市」は、日本でもファンの多いカルヴィーノの幻想的な作品です。
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旧ユーゴスラヴィア出身のユダヤ系作家、ダニロ・キシュ。「庭、灰」は、著者の自伝的三部作のうちの一作で、待望の本邦初訳です。もう一つの収録作「見えない都市」は、日本でもファンの多いカルヴィーノの幻想的な作品です。
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人が一人では生きていけないように、文学は一冊では成立しない。
一冊の本の背後にはたくさんの本がある。本を読むというのは、実はそれまでに読んだ本を思い出す行為だ。新鮮でいて懐かしい。
そのために、「文学全集」と呼ばれる教養のシステムがかつてあった。それをもう一度作ろうとぼくは考えた。
三か月で消えるベストセラーではなく、心の中に十年二十年残る読書体験。
その一方で、それは明日につながる世界文学の見本市、作家を目指す若い人々のための支援キットでなければならない。敢えて古典を外し、もっぱら二十世紀後半から名作を選んだのはそのためだ。
世界はこんなに広いし、人間の思いはこんなに遠くまで飛翔する。
それを体験してほしい。
ケルアック「路上」の新訳から始まる、と聞いただけで、この全集自体の持つ旅感に胸が踊る。リストを見て、おお、おお、と、九回も声をあげた。これらの名作たちが、かつて、かの「海外小説選」を刊行した河出書房新社と、池澤夏樹という、風変わりな天然石のような文学者によって、一冊ずつ丁寧に編まれ、新しく書物として本屋さんにならぶ、と思うとただもう嬉しい。「新鮮な」文学全集というものを、ひさしく見たことがなかったからだ。
誰もが一応文句のない作品を並べた無難な全集ではなく、一個人の愛情と情熱と偏見とに貫かれた、編者の顔が見える世界文学全集。そりゃあ、ろくでもない一個人の愛情や偏見では困るが、池澤夏樹のそれなら歓迎である。20世紀後半の作品を中心にしたセレクションは、これまでに出されたどの世界文学全集とも違っていて、新しい。もちろん新しさ自体はかならずしも価値ではないが、この新しさは確実に価値である。