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   <title>4444 古川日出男</title>
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   <updated>2010-03-12T06:21:52Z</updated>
   <subtitle>またまた現在発売中の「BRUTUS」誌のカルチャー頁に、イラストレーター・黒田潔さんとの対談が掲載されています。黒田さんの圧倒的に素晴らしきビジュアルストーリーブック『森へ』について語らせてもらってます。それから３月10日に配布開始されるスタジオジブリのＰＲ誌「熱風」の村上春樹特集にもコソッと寄稿しました。さて、対談、原稿と来たら朗読ギグということで、３月21日の日曜日に原宿の VACANT で行なわれる湯浅湾さんのイベントに特別編成のフルカワヒデオプラスで参加します。今回はなんとドラムレス！　アコースティックギターに持ち替えた植野隆司、プラスアルファから連続参戦の千葉広樹、プラスの顔たる戸塚泰雄、以上敬称略にもちろん僕です。ここまでのシーズンを終えたら、いっきに『LOVE』＆『MUSIC』の季節に突入します。</subtitle>
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   <title>35　何回ガチャガチャいった？</title>
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   <published>2010-03-12T06:20:23Z</published>
   <updated>2010-03-12T06:21:52Z</updated>
   
   <summary>　　　 　それから僕はシジをする。ちゃんと電話でつたえる。これは携帯電話です。僕...</summary>
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      <name>河出スタッフ</name>
      
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　それから僕はシジをする。ちゃんと電話でつたえる。これは携帯電話です。僕のポケットは携帯電話のハカバではありません。「でもね、でもねでもね、ハカバはあるの」と、かけてきた子が言う。その前に「どうしてママじゃないのにでるの？」と言う。僕はまず、ちゃんと携帯電話がマヨい込んできたことを説明した。これはどうにもならない。いつもいつも、僕は説明してきたけれど、これは勝手に起きる。僕の右のポケットで起きることが多い。左のポケットにはちっちゃなナイフが入っていて、僕は、このナイフで皮をむかないとフルーツが食べられない。あんまり大きなナイフは持っていると警官にショクムシツモンされるって、僕はマユねえに言われた。マユねえ、ねえの字は姉。でも僕は書けません。だってマユねえはいつもいるから。いる人を字にしたりはできません。
　それから携帯電話の子がふしぎなオハナシをした。
　オハナシをしながら「ママにそうだん、する」と言った。
　僕は「なにを？」とたずねた。「だって、でないでないの、まわしてもでないの」と言った。僕はぴんときました。だから説明した。「お金は入れたんだね？」って。「ちゃんと、ちゃんとちゃんと！」とその子は言った。僕の持っているこの携帯電話は僕がショユウしていいものではないから、僕はきちんと回答しようとする。その子がママにたずねているんだから、僕がシジしないとって思う。何回ガチャガチャいったか問い合わせながら、僕はほんとうにバス停の……ハカバなんてあるんだろうかと疑問に思う。でもなんだか、あるのがわかる。そして、そうしたオハナシの全部がはじまる前に。僕は電話に出たのでした。「はい、トトキです。こちらはトトキです。こちらは」
      
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   <title>34　どんな職場ならば就業時間中に辞表を出してガトーショコラを食べに行くか？</title>
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   <published>2010-03-05T02:33:12Z</published>
   <updated>2010-03-05T02:34:15Z</updated>
   
   <summary>　　　 　ここは海じゃないんだ、と彼女は思う。だんだん海なんじゃないかって気がし...</summary>
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      <name>河出スタッフ</name>
      
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　ここは海じゃないんだ、と彼女は思う。だんだん海なんじゃないかって気がしはじめていて、違う違うと否定する。でも、お店がじつは太平洋と日本海と瀬戸内海に囲まれてるかもしれないって可能性は、どう？　彼女はそんなふうに自問している自分に愕然として、飲みすぎだ、と判断する。どうして居酒屋の壁には、メニューがこんなふうにばりばり貼られてるんだろう。ばりばり？　ばらばら？　ばんらばんら？　なんだろう？　と彼女は思う。
「お札みたい」
「なにが？」
「お札じゃない」
　友だちの一人（彼女の友だちのボーイフレンドだ。さっき、足のさきで彼女の太股にふれてきた。その靴下、どうなんだよ、と彼女は思った。臭いことないのかよ？）にそう応じて、ここには祈りもおまじないも無し、と判断する。メニューはただのアイキャッチのためのメニューで、定番と本日のおすすめがあるだけだ。そこに、赤丸。しかも二重丸。〆鯖、と彼女は思った。うん、あれはシメサバって読むはずだ、と彼女はうなずいて、“〆”の字がなにかに似ているとは思うが、どうしても答えを出せない。
　そして魚介。
　海のメニュー、いかのお刺身、平目に、鳥貝に……。
「ビール、ジョッキで追加の人」
「はい」と彼女は言う。違った、あたしは梅酒のロックだったのに。いろんな梅酒がここにはあって。そうだ、京都の梅酒もここにはあって。それをロックにしようって思ってて。でも、京都は海とは縁がないの？
「若狭湾」
「あたし、訊いた？」
「いやだ、ちょっとトイレ」
「で、だれが辞めるの？」彼女はやっと訊いた。
　そこまで足のさきで侵入するなよ。手を握るのと、違うぞ。店員の年配の女性が「うちではねぇ、鶏の軟骨の唐揚げがぁ、自慢ですから」と自慢するのが彼女の耳に入る。ここは海じゃないんだ、と彼女は思う。それとも海棲ニワトリ？
　海。海の音がする。
　高梨は会社を辞める。
　あたしはどうするの？
　もう吐きたい。ここには食べたいものは無い、無い。ああ、もうジョッキが空いちゃうし、と彼女は思う。脳裡にはガトーショコラが浮かんでいて、「あたし、あんたの顔に塗ってやるから」と宣言する。彼女は声に出している。

      
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   <title>33　四四四</title>
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   <published>2010-02-26T04:24:26Z</published>
   <updated>2010-02-26T04:25:20Z</updated>
   
   <summary>　　　 　起立、礼。やぁ、そのままで。ちょっと着席を我慢しろ。今日は手紙を受けと...</summary>
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　起立、礼。やぁ、そのままで。ちょっと着席を我慢しろ。今日は手紙を受けとったから、言うことがある。たしか落合の父兄からの……あぁ、姉さんからのか。おかしなもんだな。父兄ってチチとアニって意味だろ？　どこに姉さんを入れたらいいのかな。これはＰＴＡの大問題だ。そして、手紙だ。「いつもお世話になっています。中略。一が一であることはかまいませんし、いろいろな数が一になると証明されたとも聞きました。それも私的にはかまいません。ですが、妹に、そして妹のクラスメートに、無理数の説明をしないでもかまわないのでしょうか？　僭越ながら」……その、センエツってゆうのは、出過ぎてますがって意味だな、落合の姉さんは凄いな。十九歳だったか？　半端な大学生じゃないな。それで……「一分でわかる無理数講座を、ぜひとも担任の安東先生にお願いできればと、切に願っております。後略。かしこ」って、そうゆうことだ。だからな、この話だけはしよう。無理数だ。じつは一と二のあいだに、二と三のあいだに、三と四のあいだに、数がある。しかもそれは、分数じゃないんだ。だから、だから……。そんな無理数の転校生が来たら、先生はすこし、困る。しかしな、名前はつけられるよ。ルート転校生だ。
　√。
　さぁ復唱しよう。ルート。
　黒板に書くからな。いい記号だろう？　じゃあノートに写すために着席。
　それからな。
　三組と四組のあいだに学級はないからな。肝試しで、ちびるなよ。ありそうに見えたら幻覚だ。「四・四……」と数えてもういちど「……四」。この再確認の呪文で、魔除けをするんだぞ。うん、字あまりの定理だ。四四四。

      
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   <title>32　だれがアトムの記憶を再生したか？</title>
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   <published>2010-02-19T02:13:06Z</published>
   <updated>2010-02-19T02:14:16Z</updated>
   
   <summary>　　　 　エスカレーターを息子と二人で降りる。 「どっちにつかまる？」と訊いたか...</summary>
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      <name>河出スタッフ</name>
      
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　エスカレーターを息子と二人で降りる。
「どっちにつかまる？」と訊いたから、
「ほら、左」と教える。
「こっちが左？」
「そっちが右」と訂正する。
「どっちもつかみたい！」とわがままを言うから、
「シンはちいさいから無理」と正直に言う。
　そうか、とおれは思う。
　つかまれるようになるだけで、しあわせなのか。
　どうしてこのしあわせをおれは捨てた？
　どこでポイした？
「ちいさいちいさいちいさい」と息子が言うから、
「だから食べれば、育つぞ」と教える。
「おいしいのを？」
「なんでも」
「ブロッコリーきらい！」とわがままを言うから、
「緑黄色の呪いだ」と解説する。
　ほとんど煙に巻いた。
　エスカレーターがまだ下のフロアにつかない。
「りょくおーしょっく？」
「そうだ、ショック」
「しょくおー、ショック！」
　緑王、とおれは頭のなかで変換してみる。
　いいかもしれない。
「緑王」と言うと、
「ショック！」と合いの手が入る。
　まだ下のフロアにつかない。
　息子が急に神妙な顔つきになる。
「どうした？」と訊いたら、
「おなかのネンリョーは、ごはん？」と問われた。
「そうだよ」と答えたら、
「あたまのネンリョーは？」と訊かれた。
　頭の燃料？
　記憶だ、とおれは思った。
　だからおれは、
「燃料は、メモリー」と教えた。
　すると脳裡にふいに回答が響いた。ＯＳの名前はアトム・ゼロ。待て、だれだ——だれだ。いま脳を——おれの脳を——ハッキングしたのは？　だれだ？　おれは必死でエスカレーターの手すりにつかまる。ぎゅう、とつかんだ。そうだ——両手でつかまないと——そうしたら幸福が——
「めーもりー」と息子が歌うから、
「シン」とおれは、
　息子の名を、
　呼んだ。

      
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   <title>31　何年前に「劇団名はアトム・ラブズ・ウランにしました」と言われたの？</title>
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   <published>2010-02-12T04:58:57Z</published>
   <updated>2010-02-12T05:01:45Z</updated>
   
   <summary>　　　 　追憶についての戯曲の執筆には困難がともなう。その理由を考えてみよう。た...</summary>
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      <name>河出スタッフ</name>
      
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　追憶についての戯曲の執筆には困難がともなう。その理由を考えてみよう。たぶん現在が過去を内包する構造になるからだ、と思われる。演劇というものは、いま現在、リアルタイムで立ちあらわれる表現だ。そこに虚構としての過去が挿入されれば、必然的に構造はメタになる。つまり、リアルタイムで起動させている表現はじつは——と断わりを入れるまでもないが——フィクションなのに、そのフィクションがさらにベール一枚の向こう側のフィクションを要求するわけだから。そして、それを咀嚼しなければならないのは観客、という事態に至る。
　不親切だな。
　しかし僕が問題としているのはそれか？
　もちろん違う。戯曲がその他の「文学」のジャンルと決定的に異なるのは、それが声に出されることを前提とした作品である、との一点に尽きる。もちろん読まれるためにだけ書かれる戯曲はあるのだろうが、それはエセ戯曲だ。失敬。
　たぶん戯曲は過程にある。
　舌足らずの説明だけれども、途上にあるのが戯曲だ。
　それは上演の途上にある。
　そして、上演するのは一つのカンパニー、ある年代というか日時に限られないから、出口は無限にある。
　つまり無限にむかっての途上にあるのが一つの戯曲だ。
　一から。
　∞へ。
　このことはさほど理解されていないと思う、僕は。
　そして問題は、戯曲は台詞で成立しているし、それはつまり、出口——すなわち上演時——においては声に出して読まれる、ということだ。稽古期間は決して読まない、という強い姿勢を持ったカンパニーがあってもいいし（たぶんタブーが関与しているんだろう、想像するに）、本番で流すのは字幕であって声ではない、との前衛的あるいはポリティカルな気概を持ったカンパニーがあってもいい（全員の観客が「耳が聞こえる」との思い込みを棄てよ！）。あらゆるものには例外があり、例外を孕んでこそ「全部」は成立する。というわけで、例外は廃除した、僕は。
　声が発せられるのが戯曲だ。
　声を発するのは肉体だ。
　肉体はいま、ここにリアルに存在している。
　すると過去の声とは、なにか？
　つまり、これが僕の追憶の戯曲に対する躊躇、どうしても感じざるを得ない困難の、核だ。一つのモットーを掲げるならば、「声はいま誕生しなければならない」となる。ならば、過去の声とは？
　そこで僕は止まる。
　それを響かせる手段を透視できなければ、もう書けないからと、止まる。
　ここには僕の耳のよさがマイナスに作用しているのかもしれない。マイナス。そうだ、あの引き算の記号。僕は過去の声をどう聞いたらいいのか？
　つまり、あのフレーズに僕はぶたれるのだ。「懐古主義」って四文字だ。
　ノスタルジアだって？
　僕たちの子供時代には線が引かれている。その線からこっち側が二十世紀、あっち側が二十一世紀……。僕たちは世紀をまたいだ子供たちだ。それがどうしたって思うか？　気をつけて想像するといい。じきに世紀をまたいだ子供たちは減る。そして消える。全員が二十一世紀生まれになって……。
　その線のこっち側。
　いまではあっち側。その終わりには、そうだな、大量殺人がありました。それから、地球滅亡の予言がありました。ジェノサイド、ジェノサイド、カタストロフィー。なんだっけ、あの言葉？　「春巻きゲドン」？　違うよ、ハルマゲドンだ。
　何語だよ。
　いずれにしても二十世紀の紹介は、死、で済む。死、死、肉体の死だ。望まれているのは大量の死だ。望まれなかったら二度の世界大戦なんて、起きていない。
　……そうか。
　声を発する肉体がもしも死んでいたら、それは過去の声になる……。
　のか？
　それで僕は電話をかける。劇団名については、電話を切ってから語るから、このことに関しての会話は交わされない（あるいは記録されない。いや、待てよ、電話を切ってからなのか——かける前じゃないのか？　それも何年も前に？）。
「あ、いま大丈夫？
　うん、まあ書けてる。
　いや、書けてない。
　頭では書きあがってる。
　抽象的なブロックがあって。
　そう。
　メンタル・ブロック？
　これもそう言うのかな。
　それでさ。
　何年生のときに、だれが死んだんだっけ。
　その子、出られないかな。うん、役者で、舞台に。言わせたい台詞があるんだよ。言わせたい台詞が、たんまり、たっぷり？　頭のなかにあって、それを書けたら戯曲はばっちり完成するんだよ。そうさ、二日で仕上げてやる。だから、ほら、何年生のときの」

      
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   <title>30　どうして引き算はネットワークを汚染するのか？</title>
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   <published>2010-02-05T02:14:45Z</published>
   <updated>2010-02-05T02:15:29Z</updated>
   
   <summary>　　　 「はい、こちらは少女プログラム一号です。美味しいあんみつの作りかたを発見...</summary>
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   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://mag.kawade.co.jp/4444/">
      　　　
「はい、こちらは少女プログラム一号です。美味しいあんみつの作りかたを発見しました。寒天は素材第一主義でゆかなければなりません。その上で、どんなふうに賽の目に切るか？　プリッとしないといけません。そうです、寒天はプリッと。料理の秘訣はまず足し算、素材や調味料をどう足すかで、それから掛け算の発想が生まれます。そして、ついに引き算の発想も！　これが素材厳選主義、『不用意に足さない』スタイルです。ここから実行プログラムを出産祝いにかえます。落合と町田の二人のこと、憶えてますか？　そう、同級生結婚です。子供を産みました。でも、落合は町田になったから、いまは落合ではありません。町田ナオだよね。その当時、わたしたちは将来きっと街を産むものだと思っていて……。いえ、懐古主義はやめます。それで、引き算のディテールでした。あんみつのための引き算の実際は——あ、もしもし？　もしもし？　どうしたの少女プログラム二号？　どうして処理が停まるの？　これネットワークの渋滞？　もしもし？」
      
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   <title>29　あと何分？</title>
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   <published>2010-01-29T12:35:35Z</published>
   <updated>2010-01-29T12:36:12Z</updated>
   
   <summary>　おれは思うんだが、赤ずきんちゃんはこんな話だ。彼女の祖母は遠いところにいる。だ...</summary>
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      <name>河出スタッフ</name>
      
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      　おれは思うんだが、赤ずきんちゃんはこんな話だ。彼女の祖母は遠いところにいる。だれも住んでいないところに住んでいて、そこが森だから、そこには狼（やら、名づけ得ない怪物たちが）いる。どうして祖母は森にいるのか？　森は人間の住むところなのか？　赤ずきんちゃんは事情を知っているわけだが——たぶん——、おれたちは知らされていない。赤ずきんちゃんは「森にも行ける」少女だ。これは驚異的な能力と言っていいだろう。異能だ。ただの人間の女の子ではない。あるいは、一種の強化スーツとしてそれを着ているのかもしれない。
　それ。
　もちろん赤ずきん付きの、だからパーカだ。
　色彩はもちろん赤。
　見るからに戦闘的なパーカだ（と思う。目にしたならば、そのはずだ。だが、目にできる者はどこにいるのか？　森にいるのか？　だとしたら、目撃者はすなわち森の怪物に類する生物なのか？　怪物の仲間なのか？　きみはどうなんだ？）。もはや彼女が「赤ずきん着用」時点で、その生物としてのモードは変更されている。
　半分人間だ。
　人間であるのは半分だけだ。
　パーカの、裾はなびいたか。
　かもしれないな。
　そして、森だ。彼女はそこに入り込んでいる。この物語に七人のこびとは出ない。あれも半分人間だった。それから狼が出る。赤ずきんちゃんが狼に遭遇した。
「あら、狼さん」
「サレ」
「去れ？」
「ココハ森ダ」
「わかってるわよ」
「ダカラ、サレ」
「用事があるのよ」
「アルワケ、ナイ」
「あるのよ。おばあちゃんがいるのよ。そこにむかうのよ」
「ソレガ人間デアルワケ、ナイ」
「おばあちゃんが？」
「オマエハ悪イ」
「わたしが？」
「オマエタチガ」
　狼が先回りをする。森を、赤ずきんちゃんの祖母の家をめざして、森のなかの獣道を。その道を通るならば、人間はずっと遅れる（に違いないと狼は確信している。狼はあまりに純粋なのだ）。すでに森に「人間の種」が蒔かれていることを、狼は赤ずきんちゃんと話して、知った。老成した人間が、すでに暮らしている！　それは見えない汚染だった。純然たる森の生物の視界には、けっして捉えられない。だが、いまはヒントを得た。だとしたら……だとしたら……。
　怪物になれ。おれが怪物になれ。
　狼は走る。
　獣道だ。狼用の、あるいは猪や熊も通るのかもしれないが、道を。
　しかし赤ずきんちゃんはただの人間ではない。
　半分だけしか人間ではない。
　狼を追う。
　パーカの裾がなびいた。
　その色彩は、赤……赤！
　追いかける影だ。狼を、びしっと追跡しつづける色彩だ。森のなかの不自然な赤。
　少女の目が光る。
　ぎらりと光る。ずきんの下で。双眸が。おばあちゃん、待っててね。おばあちゃん——おばあちゃん！
　狼は間に合う。
　狼は捨て身だ。祖母をしとめる。
　そして半分人間に立ちむかうためには、おのれも半分人間にならなければならないと直観する。その直観は正しい。だから祖母を演じる。祖母となるための「人間装」をする。ああ、これで半分人間の狼だ、と狼は思う。これでおれも十全に怪物だ。
　森のためにおれが森を汚染するのか。
　しかし強化スーツは、狼を巨大化した。
　その“パワー”の点で。
　それから対峙がある。
　赤ずきんちゃんの祖母の家で、半分人間の二者がむき合った。
　それぞれの半分ずつが、「これは騙しあいだ」——と理解している。
　ここからはグロテスクでエロティックな様相を呈する。だからこそ、民話としての赤ずきんちゃんが世界を席捲したんだが。それってどこの民話だ？　まあいい。もう時間もないから（ほら、バス停はあと二つだけだ）、おれはつづける。携帯の画面にも字をこうして打ち込みつづける。狼が、グラスに入れた祖母の血をさしだせば、少女は、それを美味しいワインだわと言って呑み干す。挑戦を受けて立ったのだ。しかし——この時点で——赤ずきんちゃんの人間性はすこしばかり絶対的に棄てられた。敗北を回避するためにそうしたことで、結局、赤ずきんちゃんは人間をやめはじめている。それは半分人間であった様態とは、少々異なる。
　肉も食べた。
　狼が祖母の声を出して、「お食べ」と言ったのだ。
　それは挑戦だったから、「あら、美味しいわ」と答えたのだ。
　あるいは彼女は、血と肉によって祖母自身となる——摂取によって“祖母化”する——ことで、より強靭さを増そうと意図したのかもしれない。それほど森は、アウェイだった。だからこそ森の生物たちは、排除を試みた。
　狼は強化スーツを脱がせようとする。
　一枚ずつ、お脱ぎ、と言う。赤ずきんちゃんに。
　着ている服を。
　その挑戦を、赤ずきんちゃんは受ける。
　脱いで、暖炉に放り込んだ。
　本来ならば、脱げば、半分人間のモードから「常人」のそれに状態をダウンさせるだけだった、はずだ。しかし、そこには戦術がある——たぶん——、だからこそ、らんらんと双眸を輝かせて、少女は裸体にちかづいた。
　ほら、祖母の血が消化される。
　ほら、祖母の肉が消化される。
　あと少し。
　あと……ほんの……少々。
　全裸の少女が、もちろん胸もまだ出ていなければ、陰部に毛も生えていない少女が、毛だらけの狼とむき合う。この瞬間、狼は戦慄した。毛だらけならば勝てたかもしれないのに、おかしな「人間装」をしている。祖母の装いをまとったことで、毛の力が抑えつけられてしまっている。それは強化ならぬ弱化スーツなのだ。
　半分人間では、負ける。
　やすやすと少女に、屠られる。
　そして少女が襲いかかるとき、狼は言う。人間の（祖母の）声音を棄てて、言うのだ。「オマエニハモウ、ズキンハナイヨ」と。「オマエガ赤ズキンナモノカ」と。
　この瞬間。
　この瞬間だ、魔術はたしかに成った。この物語から赤ずきんちゃんが消える。しかし、消えたものは読み手なり聞き手を満足させないから、それは狼の腹に収まる。
　そう、赤ずきんちゃんは食べられてしまったのです。
　おれは「つぎで降ります」のボタンを押す。バスの車内の。間に合った。あと一分は、あるか？　送信しよう。検討してもらおう、大峰に。おれが携帯電話で書いた、これ、このテキストに、ちゃんと絵をつけられるかどうか。
　なあ、大峰。
　本題です。絵本作家になろうぜ。おまえ、立ち直ンないとな。天才なんだろ？

      
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   <title>28　何割のクラスメートが聖者と化す資格を有しているのかを弾き出してみるプログラムってもう開発ずみだったかどうかの問い合わせは、した？</title>
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   <published>2010-01-22T04:18:58Z</published>
   <updated>2010-01-22T04:19:42Z</updated>
   
   <summary>　　　 　職員室にパーソナル・コンピュータが複数台、ある。もちろんネットワーク化...</summary>
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　職員室にパーソナル・コンピュータが複数台、ある。もちろんネットワーク化されている。サーバはただ一人の職員しかいじれない。ただし、その職員は学校長ではない。時どきサーバは濁る。ただし、濁らせるのは学校長ではない。職員室には校長室が付属している。いわば職員室は「校長室付き」とみなせる。この観点からすれば、校長室は個室ではない。
　だが校長室はサーバとも言えない。
　わたしたちはウイルスだ。
　わたしたちがコンピュータを濁らせている。
　月曜日の朝礼。児童全員が整列する。縦に、横に。あれがビットの配列だ。八人が並ぶと一バイトになる。通常、走り抜けるコマンドは学校長の訓話で、これはプログラムを正常に機能させる。ただし児童の一定数は貧血で倒れるから（ばたばたと）、コマンドは一定の頻度で実行不可となる。
　貧血による卒倒（ばたばたと、の）が一定数を超えたばあい、これはウイルスの仕業となる。
　わたしたちの仕業だ。
　あと一歩で学級閉鎖に追いこむプログラム。
　わたしたちはプログラムなのか？
　時おり、わたしたちは廊下を走る。プログラムだから、走る。この疾走には解放感がともなう。わたしたちは“走る”だけで構内を濁らせるのだが、それはウイルスだからやむを得ない。
　たとえば関与していない現象は、一、ポールの国旗の掲揚、そこには「日本」という問題系がある。わたしたちを動かしているのはわたしたち用のコンピュータ言語であって、日本語ではない。二、予想外の体育館の使用。雨の時季、体育館はしばしば混雑の極みにおかれるが、これはコンピュータの濁りの帰結ではない。
　梅雨が来ても、わたしたちは困らない。
　落雷が来ると、わたしたちは困る。
　コンピュータが唐突なシャットダウンに追い込まれるとき、わたしたちも「終了」する。
　ところでわたしたちは、体育の授業に出席するさいには体操着を着る。
　ウイルスの着替えは目撃されたことがない。
　しかし、わたしたちは着替える。
　一クラスは何人か？
　これは未知数ｙとしよう。
　すでに連立方程式だが。
　わたしたちはｙに示される数に分裂して、体操着になって、雨の時季ならば体育館内を満たす。
　それから教室に戻る。また着替える。教室の、後方で。壁には学級新聞が貼ってある。じっさいには画鋲で留めてある。それはヨーヨーヨーヨーと読まれる。しかし、人によってはヨンヨンヨンヨンと読まれもする、『四四四四』だ。その紙名が。
　紙だ。
　紙はウイルスに冒されない。
　デジタル化されていないがゆえに聖域に置かれる。
　ただの紙なのに。黄変し、やすやす燃やされてしまう紙片なのに。それが勝利するのか？
　聖域。
　わたしたちは、そこに保護されて誕生するはずの聖者を夢見る。それらの聖者に怯える。凡庸な人間が凡庸ではない環境でやすやす聖者として、羽化する。だから児童たちの未来には、脅威がある。わたしたちは驚いて、問い合わせをする。何割のクラスメートが聖者と化す資格を有しているのかを弾き出してみるプログラムって……。

      
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   <title>27　いかなる手紙が宇宙のど真ん中で停止したか？</title>
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   <published>2010-01-15T11:52:22Z</published>
   <updated>2010-01-15T11:55:40Z</updated>
   
   <summary>　　　 　心配事がある。心配事は後ろに置いて、晴人は家を出る。実際には家の前に迎...</summary>
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　心配事がある。心配事は後ろに置いて、晴人は家を出る。実際には家の前に迎えの車が来ている。それに乗る。運転手に挨拶して、アシスタントらしき若者に挨拶する。若者？　晴人はふと思う。他人を若者なんて感じるって、僕はいつから若者を止めたのか？　晴人はそれから、世界はどうして下の名前でしか僕を認識しないのか、とも思う。例を挙げる。ハルヒト君、ハルヒトさん、ハルちゃん、それからルヒィ……。この手のおぼえられ方って、それでも女性には便利かもしれない、この国では、とふいに日本について考える。結婚してファミリーネームが変わる制度、しかも女の人ばかりが。上の名前で認識していたら、古い、古い知り合いが連絡してきても、だれだかわからない。それを回避するには、下の名前で……。車が幹線道路から、今度はハイウェイ的なところに入った。じきに有料の本物のハイウェイに接続するんだろう、と晴人は漠然と予測している。ずっと車中でラジオが流れているのだと思った、視線を上にあげたら、違った。ＴＶだ。そこに小さな画面があって、電波を受信している。晴人は、そうかＴＶだったのか、と思う。アシスタントの若者は（やはり晴人は“若者”と脳裡に指し示す）、僕よりも後ろの席で、それを見ているんだろうか。席は三列あった。これは人を運ぶための車だ。あらゆる地点から仕事の場所、つまり「現場」へ。
　ＴＶが言う。
　新年オメデトウゴザイマス。
　ＴＶが笑う。
　モウ最高ニオカシインデス。
　ＴＶが示す。
　サァ番組ニコンナオ便リガ。
　どんなお便りだろう、と晴人は顔をあげる。一瞬は外した視線を、そこに、画面に戻す。大写しになっている手紙。葉書ではない、封筒だ。年賀状でも年賀メールでもない、この新年のための……。新年？　そうだ年が変わったんだった、と晴人はやっと認識する。そうだ冬にだってなってるじゃないかと続けて認識する。それで、どんな手紙だ？　車が下降する。道路が下向きに傾斜している。地中に入るようだった。トンネル状になった。交通混雑の緩和のための、ある種の立体道路だ。そのトンネルがはじまって、まだ続きそうだ。ＴＶがおかしい。テレビが停まる。停まった？　晴人は少し呆然とする。それからモニターに人工的な案内が、ただの無機的なアナウンスが表示される。『電波が受信できません』と。それから『お待ちください』とも。待つって……いつまで。手紙が停止している。画面に大写しになったそれが、宙に、掛けられたままで。静止画像となって在る。晴人は猛烈に知りたいと欲求する。コンナオ便リはどんなお便りなんだ。その知らせは。だから、さあ、希望を伝えろ。

      
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   <title>26　どのくらい多くのマコーレー・カルキン・フルスロットルがいたのだろうか、かつて？</title>
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   <published>2010-01-08T07:27:42Z</published>
   <updated>2010-01-08T07:28:13Z</updated>
   
   <summary>　　　 　堅士君（ところでこの漢字、合ってる？　ケンジ君）。 　わたしたちはマコ...</summary>
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　堅士君（ところでこの漢字、合ってる？　ケンジ君）。
　わたしたちはマコーレー・カルキンといっしょに生きてきました。
　忘れちゃったかな。
　たとえば『リッチー・リッチ』って映画、おぼえてる？
　忘れちゃったかな。
　もちろん『ホーム・アローン』はおぼえてるはず。わたしたちは春夏秋冬、真似しました。あのポーズ。頬に両手をあてて、「あー！」って言うやつ。
　あの映画でマコーレー・カルキンは“世界一有名な子役”になって。
　だからアジアの（大陸と半島と海の）東のほうの終わり、まさにワールズ・エンドの列島にいるわたしたち少年少女にも真似されて。
　でもね。
　わたしたち、リアルタイムでそれに付きあってたわけじゃないね。
　勝手にね。勝手に「カルキン・ブーム」起こしたんだよね。
　そう。
　勝手だよね……。
　そしてわたしたちは知ったの。
　知ったのだった。
　そのことを知ったんでした。“世界一有名な子役”のフルスロットルな、生きる軌跡。あまりに全速力な……。
　さあ、思い出して。
　堅士君、だから『リッチー・リッチ』を思い出して。
　あれ、マコーレー・カルキンの、二十世紀最後の映画だったんだよ。『ホーム・アローン』からたった……四年。そう、四年だ。
　まだ一九九〇年代の前半の制作で。
　俳優、引退することになったんだよね。
　子役なのに……。
　わたしたち、それで「あー！」って言ったんだよね。世界一は、つらいなぁって。両親が（じつのパパとママが）ギャラで揉めたとか、それってマコーレー・カルキンの出演料なのに。
　なのにね。
　ねぇ。
　ボロボロになるんだなぁって。世界一になるのって最悪、たぶん二でも、三でも、きっと世界三〇〇とか三〇〇〇でも。だれにも知られないほうがいいな、わたしたち、だれからも相手にされないのがいいな、それが結論でした。つまり「あー！」って叫んでても、なにを時代遅れでバカな……って思われるほうが。
　子供の発想なんだろうか。
　それ、子供らしい発想だった？
　逆だった？
　わたしたちはちゃんと一〇〇％の少年少女、してましたか？
　それを問いたい。だから。
　堅士君、『リッチー・リッチ』を想い起こして。それから、わたしのことも思い出して。
　さあ、一通めのメールです。

      
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   <title>25　何点になるんだ？</title>
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   <published>2009-12-25T01:57:19Z</published>
   <updated>2009-12-25T02:00:15Z</updated>
   
   <summary>　　　 　自分のだめなところ。 　持久力。 　自分のいいところ。 　瞬発力。だか...</summary>
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      <name>河出スタッフ</name>
      
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　自分のだめなところ。
　持久力。
　自分のいいところ。
　瞬発力。だからこの瞬間は。この瞬間だけは。

      
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   <title>24　いくらですかと運賃をきいてみます？</title>
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   <published>2009-12-18T01:56:22Z</published>
   <updated>2009-12-18T01:57:56Z</updated>
   
   <summary>　　　 　そこはバス停の墓場なのです。いっぱいのバス停があるのです。どこどこ行き...</summary>
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　そこはバス停の墓場なのです。いっぱいのバス停があるのです。どこどこ行き、の表示もみんな違うのです。じゃあ、そこにはバスは来ないのでしょうか？　わたしはバスを待ってみました。じつは、わたしは出口を探していたのです。その村は、夏のつぎに秋、秋のつぎに冬になったまま、ぜんぜん季節が変わりませんでした。冬が終わらないのです。雪がいっぱい積もりすぎて、村からも出られないのです。どうしたら冬のお外に出られるでしょうか？　そのために、わたしはバス停の墓場に行きました。そんなにもたくさんのバス停があるならば、きっと、いつかはバスが来るはずだから。わたしは昼間、そこに行って、夕方も待って、まだバスが一台も来ないから、夜まで待ちました。冬の村でしたから、寒かったです。でも、待ったかいはありました。真夜中にとうとう、バスは来たのです。金網のついたバスでした。そして、白い人たちが運転しているバスでした。わたしは、ママはね、乗りました。驚いたことに、白い人たちと思ったのは、うさぎの運転手さんと鶏の車掌さんでした。車掌さんというのは、ワンマン・バスにはいない、チケットを切る人なのね。ママは運転手さんに見憶えがあったから、あれ？　あなたはチーじゃない？　とききました。あのね、チーというのはね、ママが小学生のときに飼育係をしていて、校庭で世話をしていた白うさぎなの。ええ、迎えにきましたとチーは言いました。さあ、冬のお外に出発しましょう、とチーは言いました。車掌さんの鶏がコケッコーと鳴きました。ね、こんなお話なら、どう？　ほらね、この携帯のメールの写真、ふしぎなバス停のお墓のね、これはきのうママの古ぅいお友だちが撮影して送ってくれたって言ったでしょう？　ね、このお話で意味はわかったかな？　そう、もっと続けようか、いっぱい？　じゃあね、コケッコーの車掌さんに、いくらですかと運賃をきいてみます？
      
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   <title>23　だれが待ってるかなんてわからないからわざわざトンネルに入るんじゃないのかな？</title>
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   <published>2009-12-11T05:50:42Z</published>
   <updated>2009-12-11T05:51:13Z</updated>
   
   <summary>　　　 　おれは葡萄畑のあるところへ行く。 　おれは彼女といっしょに行く。 　お...</summary>
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      <name>河出スタッフ</name>
      
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   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://mag.kawade.co.jp/4444/">
      　　　
　おれは葡萄畑のあるところへ行く。
　おれは彼女といっしょに行く。
　おれは「葡萄狩りはしない」と言う。
　おれはワインが好きだし、もちろん彼女もそうだ。
　おれは「遠いところに来たな」と思う。
　おれは葡萄畑を探す。
　おれはその前に、電車でこの土地に来たから、降りた駅から線路沿いに歩いてみる。
　おれはトンネル遊歩道があるとの表示を見て、彼女に「全長１・４キロだって」と言う。
　おれは知る、そのトンネルは以前はＪＲ中央本線の電車がちゃんと走っていた、そのトンネルは明治時代に開通した、そのトンネルを走っていたのは電車でなかったりもした、蒸気機関車だったりもした、電気を利用しない列車は電車じゃない。
　おれは彼女と、トンネルを歩きはじめる。
　おれは見る、線路、鉄道標識、天井の煤、きっと蒸気機関車のだ、そしてトンネルの全部が煉瓦積みだ、水がしたたる。
　おれは彼女と、三十分、たらたらと歩く。
　おれはいろいろと話す。
　おれは彼女といろいろと話す。
　おれはトンネルの出口についても彼女と話して、実際、出口に到達する。
　おれは彼女といっしょに、山を一つ、地中を通って抜けている。
　おれは「まぶしいな」と言う。
　おれは簡単に葡萄畑にゆきつく。
　おれは葡萄を栽培している棚を見る、ハウスを見る、丘を下る、日照を感じる、それがワインを作る？
　おれは彼女と手をつないでいる。
　おれは舗道と葡萄畑と緑の渓谷がＹ字型に衝突するところに、バス停を見る。
　おれはたっぷりの日当たりと、あざやかな緑のただなかに、十……十五……二十ほどのバス停を見る、だからバス停の標識を、標識群を、その密集を。
　おれは「バス停の墓場だ」と彼女に言う。
　おれは彼女が「時刻表、ついてる。終点、全部違うね。あ、終バスの時間も。ねえ、みんな錆びてる？　ねえ、そうだよね。バス停だって寿命が来たら捨てられるんだ。用済みになったりして、そしてお墓があって。そんなこと、考えたこともなかったなぁ。ねえ、トンネルの先、バス停の墓場だった」と言うのを聞いて、奇跡だなと思う。

      
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   <title>22　四四</title>
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   <published>2009-12-04T04:58:13Z</published>
   <updated>2009-12-04T04:59:49Z</updated>
   
   <summary>　　　 　起立、礼、着席。それじゃあ定理。 　おお、いま顔が輝いたな？ 　そうだ...</summary>
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      <name>河出スタッフ</name>
      
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　起立、礼、着席。それじゃあ定理。
　おお、いま顔が輝いたな？
　そうだ、今日は定理だ。テイリ、と復唱。それは理論じゃない。証明できるからな。リロンじゃない、ショウメイできます、と復唱。いいか？　算数の教科書をひらいたって、むだだぞ。いま、おれは大人の安東として話してるんだからな。担任のアンドウ先生じゃない、ただ一人の人間としての、そうだ——人生の先輩の。
　さあ、四年四組だ。
　このクラスだけの定理を、じゃあ、やるぞ。
　おまえたちにはおまえたちの人数がある。
　児童数だ。
　しかし、四年四組の定理においては、おまえたちが何人いても、その合計は一に等しい。
　つまり、おまえたちが十二人だけでも、答えは一クラス。
　おまえたちが二十二人なら？
　答えは一クラス。
「四年四組に属している児童１に、何人の児童を足しても、答えは——」と導きだされるのが……。
　ん？
　むずかしいか。
　じゃあ、たとえば。
　たとえば、だ。
　三田、大峰、それと久保田、おまえたちを足したら、何クラスだ？
　そう、１。
　そこに原田を足したら？
　そう、１。
　そこにファンタ……じゃない、望月も足したら？
　ほら、１。
　だから「答えは——つねに＝１」だ。
　おれは先週、職員会議で大胆な提案をした。
　おれは先週、実験的な提案をした。
　転校生が来たら、全部、全部ってゆうのは全員だな、このクラスに受け入れる。
　受け入れますと言ったんだ。
　これは実験だ。もちろんルールが変わるからな。一クラスの児童数のめどってのは、最大どのあたりかの理想数をおれは無視する。理想の数を。しかし、ほかの先生たちはうれしいだろう。負担が減るからな。そう、負担だ。一人の担任にかかえこめる数。フタン、と復唱。
　よし。
　いいか？
　転校生はふえる。
　この四年四組の、いわば人口がふえる。
　それでもこのクラスは一クラスでしかない。
　おまえたち一人ひとりが、つまり、＝１だ。これが四年四組の定理、あるいはアンドウの四四定理だ。おまえたちは無限に、１だ。

      
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   <title>21　で、いま何時？</title>
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   <published>2009-11-27T06:37:14Z</published>
   <updated>2009-11-27T06:43:24Z</updated>
   
   <summary>　　　 　離陸します。 　オウギはその瞬間を感じる。シートベルトは着用している。...</summary>
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　離陸します。
　オウギはその瞬間を感じる。シートベルトは着用している。窓際の席は空いていませんとチェックイン・カウンターで言われたから、通路側の席に座っている。あたしは何度、トイレに立つのか？　さあ。斜めになる。離陸と上昇のために斜めになるのは機体だが、結局、オウギが斜めになっている。窓の外を見ないと、ただ単に“箱”が傾いたようにしか思えない。あたしが詰められた“箱”？
　時間は経過します。
　ハワイにむかっている。州都ホノルルのあるオアフ島に。だから太平洋を西（ほとんど西のはしっこの日本）から東に飛んでいる。いつか日付変更線を越えるんだっけ？　そうすると、前の日になるんだっけ？　ちがうか、時間帯によってはならないんだっけ？　でも、飛べば飛ぶほど、一時間ずつ、時間は巻きもどるはず。だから、ほら、時差。その時差を生じさせながら、飛行機は飛ぶ。あたしは飛ぶ。
　チキンにしますか、ビーフにしますか。
　機内食を食べる。英語を話すときだけ、自分の名前には特別さがないのだと実感する。あたしはオウギで、ただ単に発音されるオウギだ。漢字で書いたら一文字だけの苗字で、けっこうスペシャルに目立つのに。だから扇って。あたし、扇千里って。オウギ・チサト。でも英語だと、ただ単にチサト、とか、オウギって発音されるだけ。そうだ、一文字の仲間がいたな。そうゆう苗字の人はあんまりいないけれど、小学校にはいた。クラスメートで。
　時間は巻きもどります。
　時差、時差、時差。そうだ、スミ君だった。もちろんスミ君。あたしは最初のクラスから好きで、でも、告白なんてしたことがなかった……。だって小学生は告白なんて「センないこと」って思ってるし。いまの子供たちはするのかな？　ただし中学生になったら、違うね。それで、スミ君だ。あたし、中二で再会して。あのスーパーマーケットで。スーパーマーケットみたいなとこに入っていた、テナントの、書店で？　あたし、声かけて。ほとんど勇気も要らなかった。突然だったから、運命みたいに——運命みたいに思えて、声だって出た。そうしたら、あーあ。
　本機は定刻に到着します。
　うん、オン・タイムに？　時間を巻きもどしながら一路東に飛んでるのに、オン・タイム？　それで、あれだ、スミ君だ。あたしにニコッて笑いかけて、でも戸惑ってて、笑ったのも反射的な感じので、それから言われたな。「だれ？」って。あーあ……。あれは絶望したね。なのに、すっかり忘れてたね、あの思い出。かなりキツかったからかあ。即、あたし泣いたよね？　どこでだっけ？　だから、あのスーパーマーケットの地下か、一階かの、食品売り場の……野菜？　ちがうか、鮮魚コーナー？
　乱気流です。
　ゆれるなあ。また時間、もどるなあ。思考はそこでフリーズする。客室乗務員に、気分がわるいのですか、と問われる。いいえ、とオウギは答える。しかし、とりあえずオウギはトイレに立ち、もどる。もどっても自分が飛行する“箱”のなかにいる状況が変わらないのだ、と痛烈に認識する。しかし、この“箱”は時間をどんどんマイナスにする。そして思い出す。そうだ、鮮魚コーナーだ。あたしは鱒を見ながら、泣いた。氷の上に並べられていた、ほかの魚といっしょの、でも鱒だけを見て。顔がヘンだったから？　鱒のあごの形って、なにか言いたげだったから？
　時間は早送りはできません。
　でも、とオウギは思う。あたしは涙ぼとぼと落としながら、スミ君、ねえって思ったんだ。あなたは鱒を見るでしょう。これは予言でしょうって。超ヘンなの。なんだろう。なんだろう、これ？　つまり、未来の宣告？　てゆうか、あのときの未来って、もしや現在？　また客室乗務員が来る、と通路側の席のオウギは目にとめる。そして、尋ねる。いま、どのあたりを飛んでいるのですか？　あたしたち、日本とオアフ島のあいだの、どこを？
　で、いま何時？

      
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